T1標的ではK-hall内の二次ビームラインに粒子を供給するために30%という大きなロスが仮定されている。従ってトンネル構造も人間がビームダクト付近に直接アクセスせず、シールド上部からメンテナンス作業を行うというのが基本方針である。コンクリート遮蔽厚は5.1.1節で述べる通り簡易計算式を使って設計されているが、固体標的にビームが衝突する場合には放射線量のピーク位置がビーム前方方向にずれることが考えられる。従ってメンテナンス用のサブトンネル内の放射化をMARSコードで評価することは意味がある。
図2.3にシミュレーションで用いたジオメトリの例を示す。ここでターゲットは6 cm厚のNiとし、標的付近にはスインガー電磁石や2次ビームライン用の二重極電磁石などが1.2節で述べられたようなビーム光学に従って配置されている。
結果を図2.4に示す。図で示されている残留放射能は、ビームラインから1.8 m離れた場所の値であり、ここにはビームラインのメンテナンスを行なうためのサービススペースが配置されることになっている。T1標的真上の領域で値が高くなっているが、ピークは標的からみてやや下流に移っている。これは2次粒子が前方に多く放出されるためである。ビームラインから1.5 mの鉄遮蔽体を隔てた場所の残留放射能は最大でも2 mSv/hr程度になっており、何とか作業が行える範囲に収まっている。今後、コリメータや全体の詳細構造も取り入れた上で遮蔽基準値をクリアするような最適化を行っていく。