本節では、4.1.2節および4.1.3節のシミュレーションから得られた、T1下流部のコリメータおよび電磁石の構造と配置に対する考え方や条件をまとめる。
これらを考慮に入れて、T1標的下流部の配置についての概念図を図4.6に示す。T1とD1の間に必要な長さのコリメータを入れるために、T1とD1の距離を十分とる必要がある。コリメータの主要部分は真空ダクトと一体構造とせざるを得ないだろう。T1側は大気圧なので、コリメータの上流側にはビーム窓が取り付けられる。コリメータの冷却水管の取り回しは、ビーム窓やダクトの冷却を同時に考慮する必要がある。D1がT1から離れると二次ビームラインのアクセプタンスが小さくなるかもしれない。これを補うために、収束電磁石(Q)をコリメータの位置に設置することが考えられる。コリメータはQの磁極内に組み込まれることになる。これが可能かどうか、今後、2次ビームラインのビーム光学と技術的な検討が必要である。コリメータとD1の真空ダクトは、ラジアルシールにより接続される。D1の真空ダクトの冷却が必要になるかもしれない。詳しい熱解析が望まれる。
図4.7に、コリメータの間口形状の案を示す。図のとおり、コリメータのアパーチャは、水平方向が最大83 mrad、鉛直方向が最大 45mradである。1次ビームのエミッタンスを mmmradとしたときのT1での像の大きさが0.8 cm、勾配が6 mradと見積もられている(1.2節参照)。これに対してコリメータのアパーチャは十分余裕がある。また、水平方向には、ビームスインガー光学(BSO)によりT1でのビームに傾きが生じる。この傾きは、2次ビームラインの最大運動量(D1の最大磁場)のとき最大になり、最大の傾きは、1次ビームのエネルギーが小さいほど大きい。例として1次ビームのエネルギーが24 GeVのとき、最大の傾きは25 mrad程度になる。コリメータの水平方向のアパーチャは、BSOによるビームの傾きに対しても十分余裕を持っている。D1のアパーチャは、コリメータのアパーチャより広く取るのが望ましい。D1の磁極長を1.5 mとして、D1の入り口がT1から0.9 mのところにあるとすると、D1の磁極間隙および磁極幅はそれぞれ25 cmおよび50 cmは必要になる。 今後、これらをもとに実際的なデザインを行なう。