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4.1.4 構造、配置

本節では、4.1.2節および4.1.3節のシミュレーションから得られた、T1下流部のコリメータおよび電磁石の構造と配置に対する考え方や条件をまとめる。

  1. T1とK1.8-D1の間にコリメータは必須である。効果的な材料はおそらく銅であろう。
  2. コリメータは効果的に冷却しても数百度の高温になるので、冷却水配管および周辺の真空ダクトや電磁石に使用される部材の選別には配慮が必要である。
  3. K1.8-D1電磁石の表面を20-40 l/min相当の冷却水で水冷する必要がある。
  4. D1とBS3の間にコリメータが必要である。仕様は、T1とD1の間のものに準ずる。

これらを考慮に入れて、T1標的下流部の配置についての概念図を図4.6に示す。T1とD1の間に必要な長さのコリメータを入れるために、T1とD1の距離を十分とる必要がある。コリメータの主要部分は真空ダクトと一体構造とせざるを得ないだろう。T1側は大気圧なので、コリメータの上流側にはビーム窓が取り付けられる。コリメータの冷却水管の取り回しは、ビーム窓やダクトの冷却を同時に考慮する必要がある。D1がT1から離れると二次ビームラインのアクセプタンスが小さくなるかもしれない。これを補うために、収束電磁石(Q)をコリメータの位置に設置することが考えられる。コリメータはQの磁極内に組み込まれることになる。これが可能かどうか、今後、2次ビームラインのビーム光学と技術的な検討が必要である。コリメータとD1の真空ダクトは、ラジアルシールにより接続される。D1の真空ダクトの冷却が必要になるかもしれない。詳しい熱解析が望まれる。

図 4.6: T1標的下流部の構造、配置の概念図
T1configuration.jpg

4.7に、コリメータの間口形状の案を示す。図のとおり、コリメータのアパーチャは、水平方向が最大83 mrad、鉛直方向が最大 45mradである。1次ビームのエミッタンスを$24\pi$ mm$\cdot$mradとしたときのT1での像の大きさが0.8 cm、勾配が6 mradと見積もられている(1.2節参照)。これに対してコリメータのアパーチャは十分余裕がある。また、水平方向には、ビームスインガー光学(BSO)によりT1でのビームに傾きが生じる。この傾きは、2次ビームラインの最大運動量(D1の最大磁場)のとき最大になり、最大の傾きは、1次ビームのエネルギーが小さいほど大きい。例として1次ビームのエネルギーが24 GeVのとき、最大の傾きは25 mrad程度になる。コリメータの水平方向のアパーチャは、BSOによるビームの傾きに対しても十分余裕を持っている。D1のアパーチャは、コリメータのアパーチャより広く取るのが望ましい。D1の磁極長を1.5 mとして、D1の入り口がT1から0.9 mのところにあるとすると、D1の磁極間隙および磁極幅はそれぞれ25 cmおよび50 cmは必要になる。 今後、これらをもとに実際的なデザインを行なう。

図 4.7: コリメータの形状(案)
collimatoraparture.jpg


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Yoshinori Sato
平成14年9月11日