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4.1.2 コリメータでのエネルギー損失分布

T1標的は30%のビームロスを仮定しているので、6 cm厚のNi回転標的を候補としてデザインを進めている。ビームが標的に衝突して生成される大量の二次放射線は大部分が前方に放射され、下流の物質を発熱させる。T1付近にはビームスインガー磁石として用いられる双極電磁石や四極電磁石などが込み合って存在している。

4.1にコリメータが無い場合の計算結果を示す。エネルギー密度が高いのは標的のすぐ下流に設置されたD1電磁石で、 $3.0\times 10^{14}$の1パルスビーム当たりで約180 kJの熱量が与えられる。3.4秒サイクルの平均では約60 kWの熱入力に相当する。これらの熱入力の2/3は$\pi^{0}$の崩壊による高エネルギー$\gamma$線であり、前方方向に集中しているため対処が難しい。しかしロスを局所化させて下流の電磁石などを守るためにはしっかりとした冷却系をもつコリメータを作る必要がある。

4.2にターゲットとD1電磁石の間にコリメータを設置した場合のエネルギー密度分布を示す。今のところシミュレーション上ではビーム方向と半径方向の2次元の円筒座標でメッシュを切って計算している。図からもわかる通り、エネルギー密度の高いのは電磁石の最内部と上流側である。図4.2に熱入力を下げるためのコリメータを置いた場合のエネルギー密度分布を示す。図4.1と比べて電磁石上のエネルギー密度は1/4程度に減少した。

次節以降で述べるように、金属の物性値を考慮に入れた熱伝導計算と緊密に連携しながら、磁石が安全に運転可能なレベルまでエネルギー密度を下げるようなコリメータ設計を進めていく予定である。

図 4.1: コリメータ無しの場合のエネルギー密度分布
collimator_heat2.jpg
図 4.2: コリメータを設置した場合のエネルギー密度分布
collimator_heat.jpg


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Yoshinori Sato
平成14年9月11日