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4.1.1 全体設計、要求

4.1.2節に示すように、50 GeV-PSの運転中、T1標的の周辺はビームエネルギーの一部が解放され恒常的に高熱高温場になる。ビームとT1標的物質との相互作用に伴って放出されるエネルギーのほとんどは、前方、すなわち標的の下流部分に向かう。標的の下流には、二次ビームライン(K1.8)やビームダンプライン(標的を通り抜けた一次ビームをビームダンプに導くためのビームライン)が接続される。これらのビームラインの先頭の電磁石(D1)は、ビームラインのアクセプタンスを十分大きくとるためにできるだけ標的に近接して設置したいところである。しかしながら、本計画の場合、解放されたビームエネルギーによる電磁石の温度上昇を考慮しなければならない。実際、以下の節で述べるとおり、なんらかの能動的除熱を行なわなければ、電磁石鉄芯の温度上昇は鉄のデバイ温度を超えて700度以上に達することが予想される。こうなると、もはや磁石の機能を失い、ビームライン機器として果たすべき役割は期待できない。 以上のことから、解放されるビームエネルギーの一部を引き受けるためのコリメータを、T1標的の下流に設置することが検討された。このコリメータの担うべき基本的な仕様は次のとおりである。

  1. 下流のビームラインの必要なアクセプタンスを確保すること。
  2. 標的から見て、下流の電磁石ヨーク、磁極やコイルを十分な厚さでマスクし、電磁石への熱負荷を十分低くすること。
  3. コリメータ自身の温度上昇を低く抑えること。
  4. 冷媒の放射化を可能な限り低く抑えること。

MARSシミュレーションコードを用いて、コリメータやD1および下流の電磁石へのエネルギー付与(および放射化)の分布を調べた。この分布を初期値として、ANSYSシミュレーションコードを用いて、コリメータ等の温度上昇とその時間発展をさまざまな境界条件(冷却条件)のもとで調べた。


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Yoshinori Sato
平成14年9月11日