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標的本体の設計にあたり、BNL-AGSにおける1995年以降のC、C'、Dビームラインの水冷固体ターゲットやg-2実験における回転ターゲットなどを参考に、本体材質の選択や全体機構の検討を現在行っている。従って、ここに示す本体に関する仕様は放射線管理上からくる制限(以下の項目1.)以外は、検討中のものである。本稿においては、回転円盤標的となっているが、そこに至る過程で、BNL-AGSにおける固定型の水冷標的など形状、除熱方法など検討を行なってきた。詳細は、ターゲットモニターグループの議事録または別紙を参照。
T1標的本体の条件として、
- 放射線管理上、T1標的でのビーム損失量(一次ビームと標的物質の相互作用による)は、最大30%とすること。
- 二次粒子収量、耐熱性、耐腐食性、コストを考慮して、標的物質を純ニッケル(Ni-200)を使用する。(検討詳細は別紙参照)
- 従って、標的のビーム軸方向の奥行きは、図4.17に示すように約54 mmである。
- また、取り出し角度 5前方(K1.8ビームライン)の二次ビームラインから見て点状線源に見えるサイズ、形状であることが重要である。
- 除熱のために、図4.18に示すように、標的物質は回転しながら直接その表面から熱を取り去る方式を採用する。その場合、標的部の大きさは直径240 mmとし、表面積を増やすこと及び熱応力による破壊を防止するため、標的は厚さ6 mmの円盤をスペース1 mmずつ開け、円柱上に重ねた構造とする。
- 回転速度は、入射ビームのパルス幅0.7秒による発熱の抑制と除熱のため、毎分85回転以上で回転させること。
- ビーム停止直後は、非常に高い放射線環境であるため(標的部の残留放射能は予想値で約54Sv/hr)、標的部周辺に近寄ることは不可能である。そのため交換などメンテナンスを考えると、標的の運転時間は最低1年間以上あることが必須の条件である。現在、計画されている実験利用時間はslowとfast合わせて、最大4000時間/年(=
protons)である。また、実験で使用せず標的部を通過するだけのダンプモード (target off)でも約1000時間/年を計画している。
- 設置、撤去、一時退避が遠隔、短時間で出来ること。
などがあげられる。次節にそれぞれ検討された結果を示す。
図 4.17:
ターゲット材質と50 GeV陽子ビームの反応長さ
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図 4.18:
固定型標的から回転円盤標的への転換
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Yoshinori Sato
平成14年9月11日