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4.2.3 温度上昇と冷却

ここでは、ANSYSの伝熱解析機能を使用し、4.2.2節で解説されているエネルギーディポジット量を入力して、ビームダンプでの発熱計算を行った結果を記載する。

  1. ビームダンプに $20~cm\times 20~cm$の均一矩形ビームが入射した場合のANSYSでの解析結果を図4.11に示す。
       解析での入力条件として、
  2. ビームダンプに $40~cm\times 40~cm$の均一矩形ビームが入射した場合のANSYSでの解析結果を図4.12に示す。
    解析での入力条件として、
  3. ビームダンプに $40~cm\times 40~cm$の均一矩形ビーム入射とし、ダンプ中心部の形状を変更し入射した場合のANSYSでの解析結果を図4.13に示す。 解析での入力条件として、
  4. ビームダンプに $40~cm\times 40~cm$の均一ビーム形状とし、ダンプ中心部の形状を変更し入射した場合のANSYSでの解析結果を図4.14に示す。
    解析での入力条件として、
図 4.11: K-dump熱解析1
kdumpcool1.jpg
図 4.12: K-dump熱解析2
kdumpcool2.jpg
図 4.13: K-dump熱解析3
kdumpcool3.jpg
図 4.14: K-dump熱解析4
kdumpcool4.jpg

ここで、1.の計算ではまずコアの直径を1 mとし、50 GeVの陽子ビームがほぼ止まる4 mの長さとして計算を行なった。その場合にはコアの最高温度が550度程度になり、酸化開始温度の380度を越えてしまう。2.では外側の銅の厚みを表面線量を考慮して$\phi$3 mとした場合の計算である。ここでは表面での熱伝達率と表面積の積が1.と同じになるように設定されている。この場合でもコア部の最高温度はまだ480度となっており、条件を満たさない。3.ではビームの大きさを40 cm$\times$40 cmの矩形一様分布に広げ、またエネルギー密度分布がビーム入射方向に広げるため、中心部にコーン状の空間を作った。このためコア部の全長が8 mと長くなっている。しかしこの場合でもコア部最高温度は350度程度まで下がった。しかし実際の熱伝達係数は各所に熱抵抗などが発生して悪くなることが懸念されるので、まだ余裕が必要である。4.ではコア部の全長を10 mとしたところ、最高温度が210度程度まで下がった。これは一つの可能な解として成り立ちそうである。

上記の計算ではコア部分をグラファイトにして検討してきたが、その場合に成立するモデルではダンプの全長が12 m程度にまで長くなってしまうことがわかった。施設のスペースから考えると出来るだけ全長は短くしたい所である。また、グラファイトの酸化開始温度の制約も多少厳しい。さらに放射線損傷による物性値の劣化なども懸念される。そこで、別な選択としてコアに銅を採用することも検討している。

4.15に計算結果の一例を示す。ここでの物性値は上記の計算と同じ値を使用している。コアに銅を採用した場合には密度が高いためにグラファイトの3.、4.と同様に中心部にコーン状の空間を作り、エネルギー密度を下げるような形状にする必要がある。この場合にはコア部の最高温度は300度程度になることがわかった。この場合のコア全長は5 m程度に収まっており、設計上からも望ましい大きさといえる。現在銅をコアに使った場合の酸化膜の形成、発展について、また加工材料としての強度や製作方法などについて調査を行なっており、その結果を基にして設計を考えていく予定である。

図 4.15: 銅をコアに用いた場合の熱解析例
kdump_cucore.jpg


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Yoshinori Sato
平成14年9月11日