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B.4 二次粒子の標的内での吸収

生成標的の厚さによって生成標的内での二次粒子の吸収が無視できなくなるが、0度方向(最前方)でのこの吸収を考慮に入れた「生成効率」は次の$\eta$で表すことができる。

\begin{eqnarray*}
\eta &=& \frac{\lambda^{-1}_{p}}{\lambda^{-1}_{p} - \lambda^{-1}_{s}}\left\{ e^{-t/\lambda} - e^{-t/\lambda_{p}}\right\}
\end{eqnarray*}

この式は0度方向(最前方)でのみ有効であるが、今回考えられている標的は直径の大きい円筒形(円盤)なので、有限散乱角においても近似的にこの式が成り立つと考えられる。この$\eta$を用いると二次粒子の生成量(収量、$Y'$)は上で求めたYを用いて、$Y'=\eta Y$と表すことができる。ここで

\begin{eqnarray*}
t = 0.357\lambda_{p}
\end{eqnarray*}

であり、$\lambda_{p}$のA依存性は上に述べたとおりである。

二次粒子のabsorption length $\lambda_{s}$はそのabsorption cross sectionを$\sigma_{abs}$とすると、次のように与えられる。

\begin{eqnarray*}
\lambda_{s} &=& \frac{A}{\rho N_{A}}\frac{1}{\sigma_{abs}}
\end{eqnarray*}

$\sigma_{abs}$の標的核依存性はやはり $\sigma^{A}_{abs}=A^{\alpha}\sigma^{A=1}_{abs}$ で表されるが、[5]の6-3節には$K^{-}$$\bar{p}$$\alpha$について、1.16GeV/cの実験データから得られたものとしてそれぞれ0.706と0.608が与えられている。これについても、入射粒子(陽子)の場合と同様ナイーブに考えると、

\begin{eqnarray*}
\sigma^{A}_{abs} &=& A^{2/3}\sigma^{A=1}_{abs}
\end{eqnarray*}

と考えることができる。したがって、

\begin{eqnarray*}
\lambda_{s} &=& \frac{A^{2/3}}{\rho N_{A}}\frac{1}{\sigma^{A}_{abs}}
\end{eqnarray*}

これらのことから、生成効率$\eta$は、

\begin{eqnarray*}
\eta &=& \frac{\lambda^{-1}_{p}}{\lambda^{-1}_{p} - \lambda^{...
..._{abs}/\sigma^{A=1}_{abs,p}\right]-exp\left[-0.357\right]\right)
\end{eqnarray*}

となる。したがって、入射粒子と二次粒子の吸収断面積の標的核依存性が同じであると仮定した場合には、生成効率$\eta$は標的核種に依存しない。


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Yoshinori Sato
平成14年9月11日