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B.2 12GeVと50GeVにおけるMARSとSanford-Wang経験式の比較

Sanford-Wangの式は、10 GeVから33 GeVまでの実験データをフィットして得られた経験式である。一方、MARSはかなり広範なデータをとりこんでいるMCシミュレーションコードである。今後、遮蔽等の詳細な評価はMARSで行い、一方、二次ビームの収量等はSanford-Wangで評価することになるが、ここで、12 GeVと50 GeVにおける両者の比較をまとめておく。

MARS計算は、(x,y,z)=(0 cm, 0 cm, 5.5 cm)を中心として厚さ1 cm、半径1 cmのBe標的を置き、この中心に無限小の陽子ビームを入射した。Be標的以外の部分は真空である。仮想的な測定面をz=15.5 cmに置き、この面を通過する粒子を粒子ごとに数え上げる方法で収量を求め、そこから微分断面積を計算した。なお、粒子の放出核$\theta$については、Be標的の中心からすべての粒子が放出されたとして計算した。また、ヒストグラムの定義と数え上げは、MARSが提供しているSUBROUTINE MHSETUとSUBROUTINE MFILLで行った。今回のレポートに使用した計算では、12GeVと50GeVの陽子ビームについて、それぞれ100Mイベントの生成を行った。計算時間は800MHz Pentium機で、それぞれ約200分であった。

MARSは様々な粒子を生成するが、Sanford-Wangの式で計算できる、$\pi^{+}$$\pi^{-}$$K^{+}$$K^{-}$について比較を行った。また、入射エネルギーが12 GeVと50 GeVそれぞれの場合について、放出角$\theta$が0度、5度、10度、15度における各粒子の運動量分布で比較した。結果は図B.1-B.4の通りである。図で誤差棒つきの点がMARSによる結果、実線がSanford-Wangの式による結果である。なお、MARSにおいては、0$^{\circ}$=0-1$^{\circ}$、5$^{\circ}$=4-6$^{\circ}$、10$^{\circ}$=9-11$^{\circ}$、15$^{\circ}$=14-16$^{\circ}$である。 12 GeVの$\pi^{+}$$\pi^{-}$については、MARSとSanford-Wangの一致は相当よい。両者の差は最大2倍程度である。12 GeVの$K^{+}$$K^{-}$についても、0度を除いて概ねよい一致を示している。0度での違いは、Sanford-Wangが正確に0度での値を計算するのに対し、MARSは0度から1度を足し上げているためではないかと推察される。 50GeVでは、運動量、角度によって、最大1オーダー程度以上の差が出ている。これは、今回用いたSanford-Wangの式のパラメータが10GeVから33GeVでのデータに対するフィットで得られたものであることに起因している可能性がある。 なお、今回の計算では、Kinematic Reflectionは行っていない。

図 B.1: Sanford-WangとMARSコードの比較
MARS-SanfordWang_1.jpg

図 B.2: Sanford-WangとMARSコードの比較(続き)
MARS-SanfordWang_2.jpg

図 B.3: Sanford-WangとMARSコードの比較(続き)
MARS-SanfordWang_3.jpg

図 B.4: Sanford-WangとMARSコードの比較(続き)
MARS-SanfordWang_4.jpg


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Yoshinori Sato
平成14年9月11日