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コイルを完全無機化した電磁石を開発したとしても、部品が放射線に弱くて壊れるようでは何をしているのかが分からない。ここでは付属部品の無機化の現状を述べる。ビームチャンネルで新しいものを使うときは、
- 分解して隅々まで有機物がないかどうかを調べる。
- 性能を満たしているかどうかを調べる。
- ビームラインに置いて長い間使ってみる。
という検査をして、実際の使用に耐えうるどうかを確認している。
- 温度スイッチ
2001年からビームチャンネルのビームラインの電磁石のほとんどについて、完全無機物からなるバイメタルの温度スイッチ(設定温度85度)に交換、使用している。取り付けは配管に薄い銅板ロー付けした上で銅板上に温度スイッチをネジ止めしている。ネジはゆるめるだけなので落とすことはない。現在のところ不具合は見つかっていない。
- 水配管のガスケット
外輪付き渦巻き型石綿ガスケットを使用している。メーカーによっては水洩れを起こす石綿ガスケットもあるので、品質管理を注意する。
- 信号ケーブル
温度スイッチからインターロックボックスまでの信号ケーブルは、現在ガラス被覆のケーブルを使っている。これは必ず無機化しなければならない。現在候補としてあがっているのは極細MIケーブルと、セラミックビーズ被覆ケーブルである。
- 塗料
電磁石は、鉄の錆止めとして有機物の塗料を使用している。ターゲット近くではこれも放射線劣化のおそれがある。また、ターゲット近くでは高い温度にもなるため、熱にも強い塗料を選ばなければならない。現在錆止め塗料、亜鉛メッキ、無電解Niメッキについて塩水噴霧試験を行った。また、これらの塗料を放射線場にさらすテストも行っている。
- バルブ
磁石の故障が起こった場合や、修理または交換の際には、出てくる水をできるだけ少なくしたい。そのため、できるだけ磁石の近くにバルブがあるとよい。しかし、市販のボールバルブは内部に放射線に弱いテフロンパッキンが数多く入っており、さらに製造年によってパッキンの形や数が違ったりすることがある。ビームチャンネルの電磁石の運転中でも、テフロンパッキンの放射線劣化によるボールバルブの水漏れは多い。オールメタルのボールバルブを試してみたが、それでも水漏れが起こっているというのが現状である。ゲートバルブを使うという手段もあるが、操作性が悪く、すばやく止められないという難点がある。対策としては、ボールバルブメーカにテフロンより放射線に強いグラファイト等のパッキンを使ったボールバルブを製作する、ゲートバルブに簡単に開け閉めできるような装置をつける、放射線源から遠く離す、といった対策が考えられる。
- フロースイッチ
フロースイッチの水の入り口出口はテフロンのシールテープで水を止めていたが、放射線劣化で水漏れが頻発していた。これをなまし銅の薄いパッキンを入れる改造を行ったことで、水漏れはなくなった。
- インシロックタイ
現在は耐候性のインシロックタイを用いていたが、放射線で劣化する。そこでステンレスバンドを使用することにした。ただし、ステンレス製だと長期間振動するようなものを巻いた場合には端の尖った部分で周囲の物を傷つけてしまうので、留意しなければならない。
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Yoshinori Sato
平成14年9月11日