MARSシミュレーションではサンプル設置箇所とターゲットのサイズを再現するようにジオメトリを決め、それぞれのサンプル位置での空気のエネルギーロスと中性子、ハドロンのフラックスを計算した。表5.7-5.9に結果を示す。ここで、中性子とハドロンフラックスの閾値は20 MeVとし、トリチウムの生成断面積を30 mbとした。これは過去のKEK等での測定値である。
NO生成量の計算には過去にKEK-PSやTRISTANで測定されたオゾンの生成量がG=6 morecule/100 eVであり、オゾン分子の生成量に対するNOxの生成量が0.23程度であるという神田らの論文[6]の結果を用いた。
計算値との比較を見ると、トリチウム濃度についてはMARSより求められた結果と測定値はそれなりによくあっており、これはMARSコードがファクター2程度は信頼出来るという間接的な証明にもなっている。
しかしNO生成濃度については計算値が測定値の100倍程度大きくなっており、これについての明確な説明はまだ見つかっていない。測定終了後、バッグの内側を拭取り、NOxを分析してみたが、有意な量は検出されなかった。バッグをK5標的横から取り出し、測定にかけるまでには数日かかっており、このことも影響しているのかもしれない。